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戚羽豪写真個展「泡は、最初から嘘だった」

この二年間、
僕は「別の誰かになろうとしている人たち」を撮り続けていた。

結婚式では、
まるで“永遠”が本当に存在するみたいに、人は涙を流していた。

クラブでは、
朝なんて来ないみたいに、互いに触れ合っていた。

酔った顔。
風と霜を越えた日本の柑橘の表面。
吸いかけの煙草。
赤い光の下で汗を流す身体。
音楽が鳴り続けるなか、
隅で眠ってしまった誰か。

時々、息をするために外へ出た。

朝4時の街は、
さっきまでいた部屋より正直に思えた。

濡れたアスファルト。
夏の空気。
理由もなく揺れる木々。
暗闇の中で光る自動販売機。

しばらくすると、
全部同じものに見えてきた。

結婚式。
ナイトクラブ。
雨の前の海。
踊る人。
砕ける波。
煙の中を通り抜ける光。

どれも、一瞬だけ美しく、
そして消えていく。

写真は、
何かが消えるのを止められるわけじゃないと思う。

むしろ、
最初から消え続けていたことを、
証明しているだけなのかもしれない。

だから僕は、
撮り続けていたんだと思う。

その瞬間を信じていたからじゃない。

ただ、
残らないと知っていたから。

泡は、最初から嘘だった。